単純作業

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 春です。期待に胸を膨らませた新入社員を迎えた会社も多いのではないでしょうか。そんな新入社員が最初に任される仕事が単純作業です。単純作業が重要な仕事だとは言いませんが、会社の運営のためには誰かがやらなくてはなりませんから、当然のごとく新入社員に回ることになります。

 今では事務所内で単純作業をすることもなくなったわたしですが、実を言うと昔からこれが嫌いではありません。思い起こせば、小学生の頃にはよく近所の食堂で割り箸の袋詰めの手伝いをやったものでした。どうやったら早くできるだろうかと工夫しながらやるのは子供心にも案外楽しいものでした。お手伝いのご褒美はラーメンか玉子丼だったように記憶しています。

 新卒で勤めた銀行で任された仕事は当座預金の係でした。来る日も来る日も朝から小切手や手形の印鑑照合ばかりです。今にして思うとどうして楽しかったのか分かりませんが、当時は印鑑照合に使命感さえ感じてやっていましたからなんだか可笑しくなってしまいます。

 ところで、この単純作業者を分類すると次のようになります。単純といえども仕事ですから、その人の能力だけでなく仕事観も表われるものです。それを見ているとおおよそその社員の行く末が分かってしまいます。

 ① 工夫もしないが、黙々と頑張って作業する人
 ② 工夫しながら、要領よく終わらせようとする人
 ③ 作業の手を抜き、得したと思ってしまう人

 ①のタイプは、効率の悪い仕事でも気にせず長時間頑張って仕上げたことに達成感を感じてしまう人です。組織では第一選抜で出世することはありません。こんなタイプの上司の下で働いたとしたらお気の毒なことです。
 ②のタイプは、効率の悪い仕事を黙って続けることのできない人です。工夫して生産性を上げることが価値のある仕事だと思っています。社内にはこのタイプの人がいてくれないと困ります。
 ③のタイプは論外ですから、こんな社員には早めに喝を入れてやることです。変化がなければ辞めてもらった方がいいでしょう。

 書類の封入や切手貼りを無言で真剣にやりなさいとは言いませんが、そこで認められない限り、果てしなく続くのが単純作業ですから侮ってはいけません。そこで輝いた人には次のステップが早めに用意されるのが世の中なのです。誰もがつまらないと思うような仕事にさえ、生き甲斐を感じて真剣にやる人に天使は微笑むものなのです。