後継者

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 廃業率が開業率を上回る厳しい経営環境が続くなか、わが国の中小企業は1986年をピークに20年間で100万社以上減少しています。原因は「需要が頭打ち」「競争が厳しい」など様々ですが、後継者がいないことにより廃業する企業も多いのです。

 このごろは「事業承継」に関する話題を新聞等で目にすることが多くなってきました。事業承継で問題になるのは大きく分けてふたつです。ひとつは、自社株に関する相続税等の税金の軽減です。もうひとつは、経営をバトンタッチするにあたっての後継者の育成です。

 税金の問題に関しては、一定の要件を満たす後継者が自社株を相続または贈与により取得する際に納税猶予をという優遇措置を受けることである程度は回避することができます。ただし、事前に経産省の確認を受ける等の手続きが前提になりますので注意が必要です。

 その税金以上に大切なことは、事業の経営自体をスムーズに後継者に引き継ぐことです。要するに社長の座を後継者に実質的に譲ることです。この実務的な引き継ぎが案外大変なのです。順調にいくケースの方が少ないと考えて間違いありません。特にカリスマ的な能力で事業を拡大してきた創業者にとっては、どんな後継者でも頼りないものですからそれは困難を極めます。

 創業者はどなたも起業時には多かれ少なかれ苦労を経験していますから、専門知識だけではなく社員や顧客に対する求心力があります。そんな人格的な魅力があるからこそ、承継を心配しなくてはならないほどの事業規模になれるのではないでしょうか。しかし、その後継者となると苦労をしていない人が多いのです。

 創業者もビジネスがそこそこ順調になってくると、自分の子を時間とお金をかけて大切に育てようとする傾向にあります。自分がしてきた苦労をご子息に味あわせたくないのでしょう。

 甘い環境で育つと、道を踏み外さない限り、優しくて思いやりのある人になります。しかし、それで厳しさを携えた魅力的な経営者になれるかというと話は別です。苦労をすればいいというものではありませんが、苦みや悩みを乗り越えてきた人からしか感じられない人間の魅力というものもあるのです。

 恵まれた環境の中では、自ら進んで苦労を買うような出来た子は少ないものです。あえて厳しい環境においてやることが、本当の親の優しさなのではないでしょうか。