メモは取るな

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 最近の学生は昔の学生と比べるととても真面目です。資格取得や希望する会社に就職するために、ダブルスクールで夜まで学ぶ姿は立派だと思いますが、少し気の毒な気もします。

 今考えると、私の学生時代はいい加減なものでした。わが子には、父親がいい加減な学生生活を過ごしていたとは言えませんが、脳天気にキャンパスライフを謳歌していたものでした。

 そんな中でも、一所懸命勉学に取り組む真面目な友人もいました。私はそんな友人を特に大切にしていました。真面目な友人は、授業を休まずノートもしっかり取っていたので、試験前にはノートを借りて書き写したものです。

 書いているうちにこちらは覚えてしまうので、単位はしっかり取得できてしまいます。それなのにどういう訳か、その友人は単位を落としてしまうのです。残念な友です。

 私はこれを要領の良し悪しだと思っていたのですが、どうもそうではないらしいのです。心理学的には、一所懸命ノートを取っている人の方が、逆に授業内容を覚えていないということがあるらしいのです。

 授業中のノートや会議中のメモは、記憶を促進するかのように思われがちです。しかし、その場でメモを取ったり言語化したりすると、却って理解を浅くしてしまうらしいのです。自分の感情を言語化することで、心の奥底にある本当の感情が分からなくなってしまうのです。

 仮にメモを取るのだとしたら、客観的事実だけを出来るだけ簡潔に、箇条書きに羅列するくらいがいいのです。主観的なことや感情はすぐに言語化せず、もやもやとした感覚のままにしておく方が、後日復習したときに理解がより深まるのだそうです。つまり大切なのは、知ることではなく感じることなのです。

 最近の私のメモは、理解を深めるためでも、記憶に留めるためでもありません。完全に、忘却を前提とした記録になっています。凡人はノートを持つが、超一流はノートを持たないと言います。悲しいかな、ノートは手放せません。