働かないアリ

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「三毛もいればブチもいる」。こどものころ祖母がよく言っていました。出来の良い人もいれば悪い人もいる、常識人もそうでない人もいる。いろんな価値観の人がいるのが世の中です。自分と肌が合わない人にいちいち拒否反応するのではなく、受け入れることが大切なのだと言っていたように思います。

 会社でも、いい人ばかり採用できるといいのですが、そうそう上手くいくものではありません。採用の失敗は教育では補えませんから採用に最大限の力を注ぐのはもちろんですが、組織が大きくなるにつれいろいろな社員が紛れ込んでくる可能性はどうしても高くなります。ある規模を超えたら仕方のないことです。

 では、ダメな社員に辞めてもらったら組織全体がよくなるかといえば、あにはからんや。ダメ社員がいなくなっても、残った人の中からそのダメ社員のポジションに落ちてくる人が必ずいるのです。つまり、ダメな社員に辞めてもらったら問題が解決するかと言ったら、また同じ問題が生まれてしまうものなのです。

 アリの研究家の話では、同じコロニー(集団)の中でもよく働くアリと働かないアリとがいるそうです。そのコロニーの中から、よく働くアリばかりを集めたコロニーと働かないアリばかりを集めたコロニーをつくり観察すると、どちらのコロニーも一部のアリはよく働き、一部はほとんど働かないという、元のコロニーと違わない労働頻度の分布を示すそうです。個体の個性だけで勤勉か否かが決まるのではなく組織における役割分担のようなものがあるのかもしれません。

 つまりアリの社会でも、人間社会における「2:8の法則」とか「パレートの法則」といわれる現象が実在するのです。かつての読売ジャイアンツのように、4番バッターやエースばかりを集めても、能力も発揮できないし機能もしないのです。

 そう考えると、働かないアリにも意義があるように、出来の悪い社員にも意義があるのかもしれません。ただし、出来が悪いのは仕方ないのですが、会社の方針や方向性に従えない社員、異を唱える社員については、別のコロニーに移ってもらうのがいいのです。