成功は起業前で決まり!

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 私は、大学を卒業してから地方銀行と会計事務所とで働いてきて、数多くの起業家の方に出会ってきました。どんな方が成功していくのかなと、いつもそんな視点から起業家を観察するのが習慣となっています。

 成功するための分かりやすい方程式でもあってくれるといいのですが、残念ながらそんなに簡単なものはありません。頂上に登るには数多ものルートがあるのです。

 ただ、多くの成功している人には共通点もあります。そのうちのひとつは、サラリーマン時代に活躍していたということです。いい加減なサラリーマン生活を送っていた人で、経営者になってから成功したという人には一人として出会ったことがありません。

 サラリーマン時代に他人から認められない、実績を残せない……そんな人が、起業した途端に顧客志向が高まり順回転する、なんてことは普通ありません。あることをやって上手くいく人は、別のことを手掛けても上手くいってしまうものですし、その反対もまた然りです。

 かつて脱サラして大石会計のクライアントになったAさんは、事業を立ち上げた当初は極めて順調で、まるで天がその方を中心に回っているかのような勢いがありました。

 ところが、しばらくしてその方の元上司や同僚から、その方のサラリーマン時代の良くない噂が私の耳に入ってきたのです。口だけは達者だが真面目ではないという人物評です。ビジネスは順調だし、語る内容も素晴らしい方でしたから、私はにわかにはその噂は信じられませんでした。

 しかし案の定、開業して2年ほど経つと次第に業績に陰りが見えてきました。社内外でトラブルが頻繁に起こるようになったのもこの頃です。トラブルは大きくはないのですが、なぜかいつも混乱しているのです。本人は気付いていないかもしれませんが、簡単に手っ取り早く儲けようとしているのも分かります。

 同じものを見ても、上手くいっているときには天動説、上手くいかなくなると自分勝手。状況によって見え方が違ってくるから不思議です。

 職業観と人生観はほぼイコールです。結局のところ仕事には人格が表れてしまうのです。ですから職場でのトラブルは、特定の人の周りで発生する傾向があります。転職で一旦リセットした気になっても、また同じことを繰り返すのです。そんな人が起業しても、やはりサラリーマン時代と同じことが起こってしまうのです。ただしサラリーマンの時とは違い、経営者の立場で起こったことはすべて自分で責任を取らなくてはいけないのです。