志向性の一致

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「経営者には将来のイメージが大切」と、私は経営計画の作成を勧めます。そんな私も30年以上前、20歳代で開業した当時は全く計画なんてありませんでした。

 開業当時の私は5~6人の職員に囲まれて仕事をするのが理想の事務所イメージでした。そして10年もすると、人数だけは開業当初のイメージ通りとなり、まあまあ自分的にはそこそこイケてる事務所になったかなと思っていました。

 それが40歳のころ、業界紙を見ると開業して数年で勢いよく拡大している若手税理士を目にするようになり、ちっぽけな自分に反省しました。

 そこで“将来どうなりたいのか”を自問自答しながら初めて経営計画書を書いてみました。といってもA4用紙に2枚ほどの簡単なものです。社員にも発表しました。

 不思議なもので、書くと行動は変わるものです。簡単な計画書でしたが、私にしたら社員との約束です。それと同時に自分との約束でもありました。

 それから20年が経ち、社員は数十人となり、いくつかの専門分野もでき、当時とは全く違った環境で仕事ができています。

 もっとも私は社員数が多い事務所が立派な事務所と思ったことは一度もありません。人の多さではなく中身が問題です。

 何をもって中身というのか。作り上げた数字の正確性、節税の提案力・・・もちろん必要です。私はどちらかといえば、税金は節税したうえで出来るだけ多く払った方がいいという変わった税理士です。細部にまで拘った正しい数字を作り上げるわけでもありません。でもどうしてか、お仕事をいただける。これって何かあると思います。

 私は経営するうえで大切にしていることが二つあります。一つは、社員にとって、待遇を含めて働き甲斐のある会社にすることです。もう一つは、大石会計を地域の中小企業者の目標にしてもらえるような会社にすることです。

 そこでまた大切にしていることがあります。社員の多様性は受け入れるも、志向性の大きな違いは出会いの段階で避けるということです。

 目指すところや基本的な考え方つまり志向、思想がまったく異なる者同士には問題が起こりがちです。それは、どちらかが間違っているのではなく、どちらも正しいのだけれども相容れられないことが多いからです。

 例えはよくありませんが、日本と中国のようなものです。お互いの方向性も間違ってはいない。といって100%正しいということもない。両国は間違っても合併なんてできないのです。

 完全一致は求めないまでも、根幹となる部分においては重なり合い、尊重し合える部分が必要なのです。会社も家庭も、いい関係で長く一緒にいられたらいいですね。