その場で叱る

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 よく世間では、上司は『叱る』のはいいが『怒る』のはいけないと言います。いつからそう言われるようになったのでしょうか。

 子供のころから私の辞書には、『叱る』はほぼ存在せず、日常会話で使うのは『怒る』ばかりでした。その私も今では『叱る』を使うようになりました。

 理由は、なんとなくですが『叱る』より『怒る』の方が育ちが悪そうに思えるので、少し見栄を張っているだけです。

 『怒る』をネットで検索すると、何の目的もなくただ相手に自分の感情をぶつけるだけ。それに対して『叱る』は、相手の成長を促したり、次の改善に繋げたりという教育的な目的がある、とありました。なるほどです。

 念のため、広辞苑で調べてみました。
『怒る』・・・①いかる。腹を立てる。 ②叱る
『叱る』・・・①声をあらだてて相手の欠点をとがめる。戒める。 ②悪口を言う。

 最近世間で言われている意味とは違う気がします。『叱る』とは冷静に指導するとか教育的目的がある、とはどこにもありません。

 因みに、
『戒める』・・・①教えさとして慎ませる。②過ちのないように注意する。用心させる。しかる。とがめる。

とあります。教育的目的に最も合致しているのは、『戒める』のような気がします。これからは『叱る』ではなく、『戒める』『戒められた』と使うのが正しいのかもしれませんね。

 叱るにしても怒るにしても、大切なのはその場で伝えることです。後で言ったのでは、「そんなつもりはなかった」とか、「そんなことありましたっけ」みたいになりがちです。

 人材育成の目的のひとつは、良い習慣をつけさせることです。良くない点を指摘するのに、昇給や賞与時の面談でまとめて伝えても習慣化は期待できません。

 これは動物の調教と同じです。良く出来た時も叱る時も「その場ですぐに」が調教の基本といいます。今日はよく出来たからと調教の終わりに餌をあげたのでは、タイミングが遅いのです。

 それにしても難しいのは叱ることです。その事象があった瞬間にやるのですから、こちらの人間力が試される瞬間でもあります。

 叱った自分に凹むことはしばしば、人間力はまだまだのようです。