育ち

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 8月になって、ようやく梅雨も明けて夏っぽくなってきました。子供たちの夏休みは短縮され、大人たちは移動自粛ですから世の中的には夏満喫とはいきません。 

 夏休みというと、私は結婚して最初の夏休みに家内の実家のお墓参りに行った時のことが忘れられません。家内は実家に前日入りしており、当日私は一人で行ったのです。

 家内は私の姿を見るなり、「あり得ないんですけど、その格好」と厳しい言葉が飛んできました。その時の私は短パンにTシャツ姿でした。

「嫁の実家に、しかもお盆にその格好で来るのか、お前は」と、家内は私に腹を立てたのです。今になれば私も分かりますが、当時の私にその良識はありませんでした。

 子供のころ父からよく「財産は一代で築けても、品は三代かかる」と言われたものです。私の身なりの悪さは品なのか躾なのか分かりませんが、恥ずかしながら二十歳代の私の中では違和感はまったくありませんでした。

 昔から「お里が知れる」と言いますが、育ちというのは恐ろしいものです。血統と生い立ちからくる卑しさや品のなさはなかなか取り除くことができません。そもそも自分ではそれに気付かないのです。

 森信三さんは、大体のことは生涯をかければ必ずできるものですが、気品というものは、人間の修養上最大の難物だと言いました。品は三代かかるというのもこの年になると分かる気がします。私の場合は、未だ見ぬ孫の代まで待たなくてはなりません。