事業承継

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20170227

 先日、顧問先様の感動的な事業承継の場に立ち合う機会をいただきました。創業から40数年にわたり会社を率いてきた社長でしたから、バトンを渡す歴史的株主総会は涙に溢れました。

 会社の経営理念は「清楚にして至誠」、真面目を絵に描いたような社員思いの創業社長です。どんなに苦しいときでも明るく「ハハハッ」と笑い飛ばす豪快な方でもあります。

 創業当初は苦労されたものの、真面目に努力を重ねることでバブル崩壊後の荒波も無事に乗り越え、社員を200人も抱える立派な会社に成長させました。

 しかし本当の苦労はまだ先にありました。リーマンショックに取引先が大きくあおりを受けたのです。その影響で一時は売り上げが3分の1にまで急落、会社存亡の危機に見舞われました。社長は生きた心地はしなかったはずです。

 数年間の苦難を乗り越え、今期は売上げも利益も創業以来最高を見込めるまでに不死鳥のごとく復活。攻めダルマの面目躍如です。社長の交代としては最高の花道を迎えられました。

 次期社長も前社長に負けず劣らずの魅力的な経営者です。益々期待が膨らむ、こんなに順調な承継は意外と少ないものです。

 中小企業の場合、普通の親でしたらわが子に事業を注がせたいと思われがちですが、あにはからんや。このごろは、創業者として辛苦をなめた社長は、同じ苦労を息子にはさせたくないと考える方が増えてきました。

 前出の会社は上手くいった例ですが、実際に息子が会社に入って、継がせようとして或いは継がせた結果、上手くいっていない会社も多いものです。その上手くいかない主な原因は次のようなものです。

  • 元々父子の関係が上手くいっていない
  • 息子が会社に入ってから父子関係が上手くいかなくなった
  • 父親はカリスマだが息子にそれはない
  • 会社の規模が大きくなり過ぎて息子には手に負えない
  • 新社長が自分色を出そうとして社員がついてこない
  • 息子には能力的に厳しい
  • 息子に人格的に難あり

 引き継いだ新社長は、3年間は前社長のやり方を否定することなく承継するべきです。社員は急激な変化は望んでいないのです。社員は新社長の言動をよく観察しています。良いことも良からぬことも、将来同じことが繰り返されるのですから。

『父(ちち)在(い)ませば、その志(こころざし)を観(み)、父(ちち)没(ぼっ)すればその行(おこな)いを観(み)る。三年父の道(みち)を改(あらた)むる無(な)くんば孝(こう)と謂(い)う可(べ)し』
(論語:学而第一)

……父が生きているときにはその気持ちを察して、父が亡くなってからはその行ってきたことを見てこれを承継するのがよい。そして3年の間父のしきたりを改めず喪に服する人なら真の孝子といえるであろう。