ダム式経営

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 ダムを持たない川は大雨が降れば洪水を起こすし、日照りが続けば干上がって水不足になってしまいます。だからダムを造って水を溜め、天候に左右されることなく水量を一定にコントロールします。それと同じように経営も景気のいいときこそ不景気に備えて蓄える、そんな余裕のある経営をしなくてはならない……松下幸之助氏のダム式経営

 みなさまはこの『ダム式経営』の話を聞いてどのように思いますか。40年以上前の中小企業者向け講演会で松下氏からこの話を聞いた出席者の多くは、『そんな一般論や理想論を聞いたところで何の役にも立たない』と不満に思ったそうです。そして、出席者の一人が質疑応答の時間に「どうしたらダムに水を溜めることが出来るのか、その方法を教えてくれないことには話になりません」と言ったところ、松下氏は苦笑を浮かべながら黙り、やがて「そんな方法はわたしも知りませんのや。しかし、知りませんけども、ダムを造ろうと思わんとあきまへんなあ」とつぶやいたそうです。

 この答えに会場のほとんどの人は失望したといいます。しかし、その会場には後に世界の京セラを作り上げたまだ無名だった若き日の稲盛和夫氏がいました。稲盛氏はこのダム式経営の話に失望するどころかえらく感銘を受けたといいます。ダムを造る方法は人により会社により違うから一律に教えることは出来ないが、まずはダムを造りたいと”思うこと”がすべてのはじまりなのだ。と、わたしたちの人生を貫く真理を、松下氏のその言葉から感じ取ったのですから我々凡人とは違います。こんなダム式経営の話を聞いたところで凡人には何の役にも立ちません。

 ソニーの井深大氏は「思いを貫けば真理となる」と、強く熱く思い続けることの大切さを説かれました。世の中の成功した人たちに共通しているのが、この『強く熱く思う』ことなのです。たら〜っと、なんとなしに思っているだけでは絶対にダメなのです。熱く思うことで必ず行動に変化が起こります。

 思いが変われば行動が変わり、行動が変われば習慣が変わる。習慣が変われば人格が変わり、人格が変われば環境が変わるといいます。まずはじめに、思うことがなければ何にも変わることはないのです。