赤いポストは社長の責任

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 あることに対して何かの判断をするという行為は、紛れもなくその人の価値観の表明であります。レストランでメニューから食事を選ぶことも、黄色信号でアクセルを踏み込むことも、スーパーでお総菜のレシートを領収書に書き換えてもらうことも、みんなその人の価値観の一部を表明していることなのです。

 価値観そのものは、普段は目に見えないような気がしてしまいますが、実際にはあなたの価値観は、思考パターン、行動パターン、趣味、表情、人間関係、配偶者、洋服、アクセサリー、経済環境などとなって現実に目に見える形で表われているのです。

 そして、それは会社の経営にしてもまったく同じことが言えます。その会社に表れるすべての現象は経営者の価値観の一部なのです。ですから、社員のミスやトラブルさらには不正までもが経営者の価値観の一部が表われたものと言っても過言ではないのかもしれません。

 たしかに、現実には経営者が社員の行動のすべてを監視することは出来ませんから、社員のミスを防ぐことも不正を見抜くことも難しいのかもしれません。しかし、その社員の採用段階で防ぐことは出来なかったでしょうか。社員を根気よく指導することは出来なかったでしょうか。根拠もなく、社員を信じ切ってはいなかったでしょうか。企業文化として、そんな社員の存在を許してしまう体質はなかったでしょうか。

 あらゆる社内の現象は経営者の価値観の一部が症状となって表われたに過ぎないと考えると、社員がしでかしたミスやトラブル、不正について、経営者の目が行き届かなかったという言い訳は通じないことになります。極端かもしれませんが、すべての責任は経営者にあるのです。

 「電柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも、社長の責任だと思え」……故一倉定氏