適正な給与

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「いまの給料に満足していますか」、「処遇に不満はありませんか」、「なにか会社に望むことはありませんか」、「職場にあったらいいなというものはありませんか」……こんなことを聞いてくれる上司がいたらありがたいものですね。

 現状に十分満足している社員はいませんから、上司が物分りよさげに部下に聞くといろいろな要求や不満が出てくるものです。どこに行っても完全に満たされた職場などありませんから、このような質問をされるとそれまで意識もしていなかった会社に対する不平が出てこないとも限りません。会社や上司に対する不満の噴出で、夜の居酒屋状態にならないことを祈るばかりです。

 給料を多く貰えるということに、また待遇が良くなるということに文句をつける社員はいません。こちらの思惑とは関係なく社員は単純に嬉しいはずです。給料の多寡は確かに大切なことなのですが、お金でしか社員を動機付けることができないとしたら、少し淋しすぎやしませんか。どんなに給料が高くても、モチベーションの低い社員や退職していく社員はいるのです。そもそもマズローに言わせれば、お金で満たされるような欲求は低次元の欲求水準とのことです。

 そうは言っても、経営者の立場においては、安い給料で社員を酷使するなどということは自慢にもなりません。できることなら同業他社よりもいくらかは高い給料水準でいたいものです。

 それでは、どのくらいの給料水準を目指したらいいのかというと、同一地区内の同規模類似法人の水準から1〜2割増しくらいではないでしょうか。実際には2割増しの給料は会社にとってかなり厳しい数値です。例えば他社では初任給20万円の人に24万円を、年収500万円の人に600万円を払うのですから、大変なことです。これを達成できたとしたら経営者としては大いに胸を張ることができるのではないでしょうか。

 もっとも、それで生産性が3割高ければいいのですが、生産性は他社並みだというのであれば、ただ生温い会社ということになります。給料水準は高くても、ひとり当りの労働生産性が高くさえあれば会社としてはまったく問題はない、むしろ望ましい姿といえるのです。