頭の上のハエは追わないで

LINEで送る

 試算表を前に「いかがですか」と、まるで病院で診察を受ける患者のごとく聞いてこられる社長がいます。何に対していかがなのでしょうか。「いかがですか」はこちらも聞きたいセリフなのです。

 業績が前年比20%アップでも納得できない社長もいれば、前年並みでも納得してしまう社長もいます。同じ業績でも、社長の目指す水準次第で「いかが」の程度はまったく違ってきます。一般論でしたら、経済成長率並みの増益でしたらマズマズといったところですが、それで納得しているようでは経営者としては「いかが」なものでしょうか。

 社長が達成したい目標に対して、現時点での実績はどうなのかが肝心なのです。それには、まず社長がどのような会社にしたいのかの意思表明が必要なのです。

 パレートの法則の作用かどうかは分かりませんが、市場では勝ち組みと負け組みの明暗がハッキリしてきて、上位20%の会社が全体の80%の収益を上げる傾向にあります。自社の収益だけに気をとられるのではなく、業界におけるポジショニングも気にしなくてはいけません。業界の上位1%に入ることは簡単なことではないかもしれませんが、上位2割には案外簡単に入れてしまうものです。

 そのためには技術や知識、商品力ももちろん必要ではありますが、それよりはるかに重要なことは経営者に目標があって、その実現のための方法論を常に考え続けることができるかどうかです。考え続けるだけで、1〜2年後にあなたの会社は業界の上位2割に間違いなく入ってしまいます。

 多くの経営者にはハッキリとした大きな目標がありませんし、仮にあったとしてもそれをいつも意識しているのではなく、時々思い出しているに過ぎません。しかし、常に目標の実現を考え続けている人は、たとえいまは方法論が見えていなくても、いずれ必ず見えてきます。そのときにあなたもあなたの会社も大きく飛躍することになります。

 目標もなく、頭の上のハエをただ追っているだけでは事業で大きな成功は望めません。将来に向かって変化を意識することが大事なのです。変化が当たり前になるまで辛抱強く意識し続けることです。わたしたち凡人は、何ごとにつけ意識をしないと潜在意識に引きずられるまま、昨日と同じ今日を繰り返してしまうものなのです。

 成功した人たちを見ていると、目先のことにあくせく努力をしている人はいません。経営者にとっては、目標を掲げて考え続けることの方が、目の前の仕事に汗を流すことより重要であることは間違いないのです。