基準は1000万円

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 あなたの会社の生産性(産み出した価値)は、他社と比べて良いのか悪いのかを考えたことはあるでしょうか。会社全体の損益は計算しても、一人当りの生産性(労働生産性)を意識する経営者は少ないものです。

 生産性とは会社が産み出した価値の額です。サービス業でしたら売上=生産性、物品販売業でしたら売上△仕入=生産性と考えてください。つまり生産性とは一般的に粗利(売上総利益)のことだと思ってください。そして、首都圏の中小企業における一人当りの生産性、基準値はズバリ1000万円です。

 会社の粗利を社員数で除した金額が一人当りの生産性となります。この場合アルバイトやパートタイマーは単純に社員数にカウントしません。アルバイト、パートタイマーの給料を400万円で除した数を社員数としてカウントします。年間100万円を稼ぐパートさん4名で社員1名相当として換算するのです。

 たとえば売上高2億円、仕入1億4000万円、正社員5名、アルバイト10名(アルバイト給与年額1000万円)の会社の場合、平均的な会社と比べた生産性は80%となります。粗利6000万円、社員7.5名(アルバイトは正社員2.5名に換算)ですから一人当りの生産性は6000万円÷7.5人=800万円で、1000万円の基準値に比べて80%になるのです。

 この会社は平均的な会社に比べて8割しか価値を創造しないのですから経営は楽ではないはずです。ほかの経費も他社と比べて8割で済んでいるのだとしたらそれも結構なことですが、これも単に合理化といって喜んではいられません。経費が少ないことは良いことなのですが、ここは日本ですから経費を減らすにも限度があります。あまりやり過ぎると社内の空気感に影響します。

 生産性が他社の8割で、給与水準もそれに合わせて他社の8割だとしたら能力の高い社員は集まってきません。そんな生産性も待遇も悪い会社に魅力を感じないからです。生産性が上がらないから、上がらない生産性に合わせて給料その他の経費を圧縮するのでは、根本解決にはねりません。

 会社にとっては給与といえどもコストですから少ない方が良いに決まっています。しかしここで言う少なくしたい給与は会社が支払う総額です。理想的には会社が支払う給与が少なく、かつ一人あたりの給与が高いことです。

 こんな矛盾するような話も一人あたりの生産性を高くすることですべてが解決します。経営者は忙しくなったら人を増やすなどと単純な発想を持つことなく、一人あたりの売上金額を必ず意識して経営してもらいたいものです。忙しいことで生産性が上がるのではありません。客単価のアップ、販売数量や作業効率のアップ、原価率の圧縮等によって、少ない人数でより多くの価値を産み出すことで生産性は上がるのです。