言うは易く、行うは難し

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 以前どこかで聞いた話です。男の人に騙されてばかりいた女性が、ある日を境に騙されなくなったといいます。いったい、どうしたことなのでしょうか。

 それは、その女性の男性を見る目が急に肥えたのではありません。男性を判断するときに、何を言うのかではなく何をするのかを見るようになったからだったのです。

 人は口先だけではどのようにでも言えてしまいます。どんなに優しい言葉を並べられても、その人の言っていることには耳を塞いで、とった行動だけを見ていると本来の姿が見えてきます。その人が何を言うのかではなく何をするのかを見るようになったら、人との関わりで失敗しなくなる。なるほど、確かにそうかもしれません。

 経営コンサルタントがどんな立派な講釈を並べても、自分が実際にやっていなければなんの説得力もありません。その人が経営する会社が、その人の言っているとおりに運営されていたとしたら、そのとおりに成功しているはずです。言っていることとやっていることとが違っていたら疑ってみるべきです。

 そしてそれは、とかく講釈を並べがちな会計事務所も同じです。並べた講釈どおりに会計事務所が運営されているかどうかが大切です。自分たちが出来もしないことを言っていたのでは反則というものです。正しいと思えることはまずもって自分たちが行い、それからお客様に進めることが大切ではないでしょうか。

 始め吾、人に於けるや、其の言を聴いてその行を信じたり。今吾、人に於けるや、その言を聴いて其の行を観る。(論語、公冶長篇)

 ……若い頃の自分は、人を評価するに当たって、その人の言葉を聴いただけでその人の行動を信じた。今の自分は、人を評価するに当たって、その人の言葉を聴いた上で、その人の行動を見ることにしている。