長寿企業

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 企業にとって一番大切なことはなんと言っても「継続」です。人間が生きていることそのものに意義があるように、企業は存在することに意義があります。社会に必要とされない企業は存在することはできませんから、企業の目的は継続することと言ってもいいのではないでしょうか。

 以前、京都で40年以上前から税理士事務所を経営している方に「ずいぶん歴史の長い事務所ですね」と言いましたところ、その方は100年企業が珍しくない京都では創業40年、50年はたいしたことではないとおっしゃっていました。なるほど、角度を変えると見え方は違うものだとそのとき改めて思いました。

 東京商工リサーチによりますと創業100年を超す長寿企業は全国に2万社以上あるのだそうです。さらに創業200年を超す企業も1000社を超えるそうですから、創業から20年の大石会計なんぞまだまだ赤子のようなものです。

 長寿企業というとだれもが知っている上場企業をイメージしがちですが、実は長寿企業の96%は従業員300人未満の中小企業なのです。そしてわたしにとっても意外だったのは、従業員が9人以下の企業の割合が50%以上もあることです。

 ここから分かることは企業が継続することと成長することとは全く別物だということです。企業は大きくなればいいというものでもなく、存続のためには成長を続けなければならないということはないのです。

 ある老舗の社長から「使命は100年後に伝統を引き継ぐこと」だと聞いたことがあります。つまりその老舗社長の感覚は、野球でいう中継ぎなのです。先発である創業者と2代目以降の経営者とはおのずと考え方が違ってきますが、歴史の浅い我々から見ると、その中継ぎ社長の考え方には学ぶべきところがあります。

 長寿企業は変化しない伝統を承継することはもちろんですが、その一方で時代に合わせた革新を常に行うという二つの側面を持っています。したがって長寿企業といえども100年前と同じことをやり続けている会社はありません。長寿の秘訣は、変えるべきものと変えざるものとの絶妙なバランスなのではないでしょうか。