企業規模と社員の循環

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 中小企業といえども企業を成長、永続させることは経営者の命題です。家内工業であれば家族が食べていければそれでいいのかもしれませんが、他人社員を一人でも雇っているのでしたら夢のある成長を目指してほしいものです。
 新入社員を採用したくても成長のない会社では採用できません。仕事が増えずに社員だけを増やすことはできないのです。社員の給料を毎年昇給したくても成長がなくてはそれも叶いません。売り上げが増えないのに昇給するのであれば会社の利益を減らすか経営者の取り分を減らすしかないのです。
 入社してから何年たっても後輩が出来ないような環境で社員は夢を持ち続けられるでしょうか。わたしでしたら考えられません。昨今の環境では多少厳しい場面はあるでしょうけれど、出来ることなら毎年昇給のある会社に勤めたいと思います。
 では、本当に成長しないと採用も昇給も出来ないのでしょうか。理論上はともかく、このような拡大戦略にはいずれ限界がきてしまいます。多くの中小企業は永遠なる拡大を続けることは不可能なのです。それでは、会社の規模が拡大することなく新入社員を採用したり社員の昇給を毎年実行したりすることは出来ないものでしょうか。
 実は、これらの矛盾を解く方法があります。社員の給料を上げなくて済むような会社でしたら、事業の拡大志向を取る必要もありません。どんな会社が給料を上げなくてもいいのかというと、若手からベテランまで各年代にバランスよく社員がいる会社です。つまり退職と新規採用がバランスしていて社員の循環が行われている会社です。こんな会社は毎年ある程度の昇給をしていっても給料の高い人が辞めていき、低い人を採用していますから会社全体の給与総額はそんなに変わりません。そんな循環があると会社としての給料の総額は大きく変わらないため、規模の拡大を目指さなくても済みます。
 もう一つの方法は、給料の高い社員が独立起業できるような会社でしたらそこにも社員の循環が生まれます。飲食店や美容院などには、いずれ自分のお店を持ちたいと願う若い人たちが夢を持って入社しています。会計事務所も同じです。実力をつけた社員が夢の実現のために起業できたら、残った社員もまた夢を見ることが出来るのではないでしょうか。
 社員の循環、つまり入れ替えがないと基本的に人件費は増えていきます。一定割合の社員が辞めていくのがいいのではなく、社員が人生のステージを上げるために前向きに巣立っていく、そんな会社っていいとは思いませんか。