単純作業で能力判断

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 わが家の高校生になる息子が、食後に食器を両手いっぱいに抱えて流しまで運ぶのを見ると母親は「二度に分けて運びなさい」と叱ります。皆さまでしたら、これをどう思うでしょうか。

 私は、一度で運ぼうとする息子を頼もしく見てしまいます。それで食器を割ったりしたのでは褒められませんが、多少無理してでも効率的(合理的)に済まそうという姿勢は大切です。

 こどものころ、農家の二男だった私は夏休みによく畑仕事を手伝わされました。収穫したキャベツを籠に入れて畑から担ぎ出すのですが、ひと籠に出来るだけ多く入れて少ない回数で済まそうとして、母に「腰を痛めるから」と叱られたことを思い出しました。

 キャベツ運びは体力勝負のようなものですが、普通の職場でしたら工夫次第で効率的にできることはたくさんあります。そして、出来るだけ早く済ませようとしたり効率的にやろうとすればするほど失敗は増える傾向があります。しかしそれも結構なことではありませんか。ダメ社員がしでかす失敗と、優秀な社員がチャレンジした結果起こした失敗とでは、失敗の種類が違うのです。

 ある社長は、社員の実力を簡単に見分けるには、大量の書類をシュレッダーにかける作業をさせれば分かると言います。一人ずつ同じ量の紙束を渡してシュレッダーで裁断させます。このとき、始めと終わりの時間をチェックしておくのです。

 最初からゆっくりと一定のペースで淡々とシュレッダーにかけるのはダメ社員。一方、すぐに紙を詰まらせてしまうのは優秀な社員。優秀な社員はすぐに仕事を終わらせようと紙を入れ過ぎ詰まらせてしまうのです。しかしその後、差し込み方などを工夫して改善しながら作業を続けるそうです。

 同じ作業をさせても、人より早くたくさんやろうと思うのか、与えられた時間をフルに使ってやろうと思うのか。どちらにしても、本人はあまり考えてやっていない筈です。その人の潜在意識がそうさせているのです。

 出来る経営者の多くは正確性よりも早さを求める傾向があります。時間をたっぷりかけて正確にやり終える人がダメだとは言いませんが、ビジネスの世界では絶対に大成しないタイプではないでしょうか。