迷い

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「四十にして迷わず」と言ったのは孔子ですが、五十歳をとうに過ぎた私はいまだに迷いっ放しです。

 経営における問いは正解のないものばかりです。簡単に白黒判断がつくようなことは経営判断とは言いません。そんな問いに、無理矢理にでも答えを出し続ける。これが経営ではないでしょうか。つまり経営とは、迷いとの戦いなのです。

 よく経営者は孤独だと言われます。確かにそんな場面もあります。日ごろは何かと社員に相談する私ですが、本当に重要な判断はほぼ私一人で行います。

 経営の場では、テーマが大きいほど合議制では上手くいかないものです。みんなの総意では無難な答えしか出てきません。ですから、いざという時にはトップダウンがいいのです。

 100人の社長がいたら100通りの決定があります。その決定を毎日繰り返すのですから、数年もしたら会社の規模や文化は、社長の思考や人生観が反映されたものになります。つまり会社は社員で変わるのではなく社長で変わるのです。

 なにかを決定する権限は責任の大きさに比例します。故一倉定さんは、会社において責任を取るというのは、経済的に償うということであって、辞めれば済むと言った程度のものではないと言われました。結局のところ大きな経営判断というものは中小企業においては社長にしか出来ないのです。

 しかし、よくよく考えると迷いと戦うのは経営だけではありません。買おうか買うまいか、行こうか行くまいか、声をかけようか止めようか、人生は迷いがあるからこそ楽しくなります。迷いや煩悩はワクワク感の元なのかもしれませんね。