企業経営は宗教活動

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 みなさまの会社には経営理念はあるでしょうか。優れた会社の多くには経営理念があります。ところが、そんな優良企業のどれもが創業時から立派な理念を作っていたとは限らないのです。

 大切なことは会社がどんな理念を掲げているのかではありません。一見すると稚拙な表現に思える理念でも、それが本気で社内を貫かれているかどうかの方が理念の内容そのものよりも重要なのです。

 理念にはそれを唱えること自体に効果があります。人はある考えを公言するようになると、たとえそれまで考えていなかったことでも、公言した後ではその考えに従って行動する傾向が際立って強くなると言われております。つまり始めは建て前であっても、唱え続けているうちにそれが本音になってしまうということもあるのです。

 心理学では愛、誠実、正義などは深い奥底の部分では同義であると言います。愛はあるが誠実ではないとか、誠実だけれど正義感はないということはあり得ないのです。同じように経営理念で顧客、社員、社会などに対する約束事もまた深い奥底の部分では同義であるのではないかと思います。

 顧客満足を唱える会社と社員満足を唱える会社は考え方が相反しているわけではないのです。お客様に高い水準のサービスを提供しようと思うのでしたら、サービスを提供する最前線の社員にストレスがあってはなりません。また、社員満足度を高めようと思うのでしたら、お客様に評価される会社にしなくてはなりません。

 それらはどちらも正しいことであって、表現は異なっていても本質に大きな違いはないものとわたしは考えます。つまり、正しい経営理念はどのような表現をとっているのかはあまり問題ではないのです。

 こう言うと誤解されてしまうかもしれませんが、企業経営はある意味では宗教活動のようなものです。企業、特に中小企業は経営者の考え方に賛同するものによって構成される共同体です。経営者の理念についてこられない人は、その組織を脱退してしまいますから、結果として理念や思考が近い人たちの集合体となります。経営者の描いたビジョンをバカみたいに信じ込んだ社員が多い企業ほど組織力や結束力は強いものです。