無駄も大切

LINEで送る

 国税庁の発表によると、2008年における法人の赤字申告の割合は7割を超えており、1951年の調査開始以来70%を超えたのは初めてのことだそうです。中小企業の財務の現場を預かっている我々の実感もそんな感じです。昨今は、税務対策よりも銀行対策を優先し、無理をしてでも黒字にしたがる会社も多いのが現実ですから、実際の赤字率はさらに高いに違いありません。

 倒産した会社に勤めていた人に倒産の理由を尋ねると、誰もが口をそろえて経営者の無能ぶりと語るものです。放漫経営、ワンマン経営、公私混同、同族経営、決断力の欠如……。

 実は、転職してきた人に転職の理由を尋ねても似たような答えが返ってきます。会社が悪い、社長が悪い、上司が悪い、商品が悪い、サービスが悪い、態度が悪い、頭が悪い、方針が違う、文化が違う、……悪いのも違うのも会社や経営者だというのです。自分もその一員であったことを自覚していないのです。そんな中であなたは会社のために最大限尽くしてきたのかと聞きたくなります。

 大石会計なんてほかの事務所とは違うことばかりです。電話一本の取り方や、お出迎え、お茶出し、長い朝礼、朝の駅前ゴミ拾い、マラソン参加……やっていることに合理性なんてありません。「そんなの、やってられないよ」と言われても仕方がありません。

   かつて退職した社員の中に、全員立ちあがってお客様をお迎えすることに異議を唱えた人がいました。自分が採用面接に来た時には「いい感じ」と思っていたお出迎えも、入社していざ自分がする立場になると、不合理極まりないというのです。計算の途中であっても、来客があると手を止めて立ち上がらなくてはなりません。場合によっては計算をやり直すことになります。仕方がありません。

 計算くらいやり直したらいいのです。計算の速さ以上に大切なことがあるのです。そもそも計算の途中で電話が鳴ったら、誰でも受話器を取るでしょう。同じことです。そこで受話器を取らないようでは話にもなりません。

 人が心を揺さぶられるのは合理的なことなんかではありません。多少手間がかかって無駄とも思えることにこそ、心動かされるのです。会社が売っている商品はもちろんですが、存在そのものが周囲にいい影響を及ぼす、そんな会社にしていきたいものです。