小さなリスクは恐れるな

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 50代の私が子どものころ、多くの小学校の校庭には、二宮金次郎の銅像があったものでした。薪を背負って本を読みながら歩いている例の像です。ところがそれが、いつの間にかすっかり見かけることがなくなってしまいました。

「歩いて本を読むのは危険」、「児童の教育方針にそぐわない」ということで撤去されているのだそうです。

 二宮金次郎像は、歩きながら本を読むことを推奨しているのではありません。勤勉精神の象徴なのです。その程度のことを理解、指導できない教育委員会や日本教職員組合の先生方も困ったものです。もしかしてこのごろ卒業式で「蛍の光」が歌われなくなったのは、蛍雪で本を読むのは目に悪いからという理由からなのでしょうか。

 また最近では、携帯電話を、歩きながらどころか自転車に乗りながら使っている若者も珍しくありません。ドライバーにとってはこの上なく迷惑な話ですが、これも二宮金次郎のせいだというのでしょうか。

 そういえば多摩地区のある小学校では、3年生になるまで自転車に乗ることを禁止していると聞きました。理由は、これもまた危ないからだそうです。これでは日本人が腑抜けになってしまいます。そんな小さな危険を避けていたのでは生きる力が育ちません。

 経営における格言で「小さなリスクは恐れるな、大きなリスクはとるな」というものがあります。すべてのリスクをなくそうと思うのなら仕事をしないに限りますが、それでは意味がありません。要は、大きなリスクと小さなリスクとを混同しないことです。

「虎穴に入らずんば、虎児を得ず」。子どもたちにはチャレンジさせたいものです。競わせて順位を付けるのもいいのです。大人になれば、生き抜くために挑戦と競争は避けられないのですから。