皿の上の勝負

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 ある税理士団体の全国会会長が会員に向けて、「業務品質が向上したら繁盛すると思っているのは大間違いです」と言ったそうです。事務所経営がとても上手くいっている人の発言です。

 それを聞いて私は嬉しい気持ちになりました。私が中小企業の経営者向けに日ごろから唱えている、「皿の上の勝負はするな」は正にこのことだからです。

 飲食店経営者は例外なく美味しいと言われる料理を作ろうと努力します。しかし皿の上の料理に拘りすぎて、願いと裏腹に集客に失敗するお店は少なくありません。

 美味しい料理にお客様が集まるわけではないのです。集客が好調な会社の多くは皿の上以外に、他社とは違うまたは優れた何かがあるのです。では、皿の上でなくどこで勝負をしたらいいのでしょうか。

 松下幸之助さんに有名なダム式経営の話があります。それはある講演会で語った、「川にダムがなければ、天候が少し狂っただけで、洪水になったり干ばつになったりする。ダムに水を溜めるように、経営も景気のいい時に、将来の不測の事態に備えてさまざまな経営資源を備えておくべきだ」というものです。

 それを聞いたひとりの経営者から、「それができたら苦労はない。余裕のない中小企業に、どうやったら現実にダムに水が溜まるか教えてくれないと話にならない」と反論めいた質問があったそうです。

 それに対して松下さんは、「そんな方法は知りませんのや。知りませんが、まずはダムをつくろうと思わんとあきまへんなあ」

 聴衆の多くは、松下さんのその答えにならない答えに失望して帰ったそうです。

 そんな中、その会場にいて『ダム式経営』の話に衝撃を受けていた人がいました。まだ創業から間もない後の大経営者、京セラの稲盛和夫さんです。

 稲盛さんは、ダムに水の溜め方はそれぞれで簡単ではないが、まずはダム式経営をやると強く思うことが成功への第一歩だと感じたそうです。

『ダム式経営』『皿の上の勝負はするな』・・・・・・やりかたはそれぞれ、まずは思うことが大切。これを思い続けたら、ビジネスの見え方は変わるはずです、きっと。