積極性だけが能ではない

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 企業経営にとって一番大切なものは誰が何と言っても『売り上げ』です。どんなに素晴らしい理念があったとしても、どんなに有能な社員がいたとしても、どんなに優れた技術を持っていたとしても、提供するものが売れないことには何にも始まりません。

 しかしこんなご時世では多くの会社にとって売り上げの拡大どころではありません。前年維持ができたら御の字というのが正直なところではないでしょうか。単純に売り上げを増やしたいだけであれば、借金を重ねてでも新規出店を続ければいいのですが、それではいずれ会社は資金繰りに詰まってしまいます。

 すべて順調にいけばいいのですが、実際は売り上げが計画通りにあげられなかったり、設備のために受けた融資がネックとなって運転資金に支障をきたしたりしてしまうからです。かつてなら銀行も返済のために貸してくれたものですが、この頃はそんな対応をしてもらえないケースが増えてきました。

 ですから、昨今の情勢下ではこれまでと同じ感覚で無理やり売り上げを伸ばそうという発想はしないことです。この発言は消極的に聞こえるかも知れませんが、現実に売り上げ獲得を目論んで前向きな投資をした結果、在庫、売掛金、人員、設備が過大となり本当に苦しんでいる会社がいくつもあるからです。

 また、利益に貢献しない在庫、不動産、設備は貸借対照表上から思い切って処分することも必要です。たとえ赤字が出ようとも売却していくらかでも借金の返済に回して貸借対照表をスリムにするのです。見せかけだけの資産を持っていても重荷になるだけですから。

 すべての投資が良くないと言っているのではありません。経営である以上は確実なことばかりではなく、時には多少のリスクを負う覚悟はしなくてはいけません。しかし、わたしに「止めろ」と言われて迷ってしまう程度の思いつきの計画でしたら、今はやらないほうが無難な時代なのではないでしょうか。