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忙しい確定申告が終わった直後、私は心筋梗塞で入院しました。
心筋梗塞とは、心臓の血管が詰まり、心臓に血液が届かなくなることで、心臓の筋肉の一部が壊死してしまう病気です。動脈硬化、つまり血管が細くなったり、血管内にコレステロールなどがたまって詰まることが原因で起こる病気です。命が助かったとしても、一度壊死した心臓の組織は元には戻りません。
入院までの経緯を詳細にお話しします。
確定申告の申告を終えたのが、申告期限である3月16日月曜日でした。その翌日の火曜日の夜、ソファでうたた寝をしていたところ、目を覚まして少ししてから、胸が締め付けられるように苦しくなりました。同時に、顎、特に噛み合わせのあたりが猛烈に痛くなりました。ただ、その時は数分で治まりました。
翌朝も体調は良くありませんでした。正直、休んで病院に行こうかとも思いましたが、20日の金曜日が祝日だったため、「水曜日と木曜日の2日だけ頑張って仕事をしよう」と考えてしまいました。
しかし、木曜日の夜にも、やはりうたた寝から起きた直後に、同じような胸の苦しさと顎の痛みがありました。この時点で、「少しまずいかもしれない」と思い始めました。
翌20日金曜日、また寝起きに同じように苦しくなるのではないかという恐怖もあり、あまり眠れませんでした。朝5時頃に目が覚めたのですが、ここでもやはり、起きた直後に猛烈な胸の苦しさと顎の痛みに襲われました。
この時は顎の痛みがあまりに強く、歯医者で処方されていた痛み止めを飲みました。しかし、痛みはなかなか治まらず、20分ほど苦しんでいました。
さすがにこれはまずいと思い、#7119の救急安心センターに電話しました。症状を伝えたところ、「おそらく心筋梗塞なので、すぐに救急車を手配します」と言われました。救急車は10分もかからず到着しましたが、その時にはすでに痛みは治まっていました。それでも救急隊員の方からは、重症である旨を告げられました。
なお、顎が痛くなる症状は「放散痛」と呼ばれるものです。神経のつながりにより、患部とは別の場所に痛みが伝わることがあり、狭心症や心筋梗塞の場合には、肩、背中、歯、顎などに痛みが出ることがあるそうです。
搬送されたのは榊原記念病院でした。心臓や循環器系の専門病院です。6時過ぎに到着し、すぐに手術となりました。
手術といっても、胸を切開するようなものではなく、いわゆるカテーテル手術です。部分麻酔を行い、この時は右手首と右足の付け根の2か所の血管からカテーテルという管を挿入しました。そして、心臓の血管の細くなっている箇所、詰まっている箇所まで管を通し、そこにステントという金網状の器具を入れて、血管を内側から広げる処置を行いました。
意識はありましたが、何をされているのかはまったく分かりませんでした。よく分からないまま、8時頃には手術が終わっていたと思います。
ところで、心臓には、太い血管である冠動脈が3本あるそうです。私の場合、その3本全てが細くなっていたり、詰まっていたりしていたそうです。
搬送直後に、前述の手術で1本目の冠動脈についてステント手術を行いました。2本目は完全に詰まっていて血管が見えないため、かなり難しい手術になりそうだとのことでした。ただ、詰まってはいるものの、他の細い血管が伸びてきていて血流はあるとのことで、2回目の手術はいったん退院した後、日を置いてから改めて行うことになりました。3本目については、細くなってはいるものの、手術するほどではないため、薬などで対応することになりました。
2回目の手術は、言われていた通りやはり大変な手術でした。血管が見えないため、カテーテルを通すのが非常に難しいようで、手術中、何度も何度もカテーテルを通そうとして失敗している先生方の声が聞こえていました。
そのたびに右足のカテーテルを動かされるため、手術中は麻酔が効いていたとはいえ、6時間近くかかった手術ですので、最後の方は麻酔が切れてきていたのか、かなり強い痛みがありました。手術後も1日ほど内出血が続き、痛みで歩くのも大変でした。
こうして、心臓についての当面の処置は無事に終わりました。
しかし、根本の原因は動脈硬化です。手術をして血管を広げても、動脈硬化そのものを改善しなければ、心筋梗塞は再発します。脳の血管が詰まれば脳梗塞です。心筋梗塞も脳梗塞も、結果として現れた病気であって、根本の原因そのものではありません。
思えば、一番初めに症状が出たのは2024年の年明けでした。
昼食を食べ、一人で喫茶店にてコーヒーを飲んでいる時のことです。10秒ほどでしたが、猛烈に心臓が痛くなったのを覚えています。この年から、少しの運動で息切れをするようになり、息切れに伴って顎が痛くなるようになっていきました。
今にして思えば、狭心症および放散痛だったのだと思います。しかし当時は、原因が分かりませんでした。
そして2024年9月頃、網膜動脈閉塞症という目の病気になりました。左目の奥にある網膜の血管が詰まり、網膜内に血がたまることで、視界の上半分がすりガラス越しに見ているような状態になってしまう病気です。
当然、眼科で治療を受けましたが、この年齢でこの病気になるのはかなり珍しいと言われました。また、血圧がかなり高く、目の血管が詰まったのは動脈硬化の影響だろうと眼科の先生から言われました。それから内科にも通院するようになり、血圧はかなり改善しました。
しかし、息切れや顎の痛みについて相談しても、狭心症や放散痛の可能性については特に説明がなく、ただ薬を処方してもらうために通っているような状態になっていました。そのため、血圧が改善してからは通院をやめてしまいました。
そして、この半年ほどは油断もあり、かなりの暴飲暴食をしていました。喫煙も続けていました。その結果が、今回の心筋梗塞です。
今回の経験で痛感したのは、「大丈夫だろう」という自己判断が、いかに危険かということです。
胸の苦しさ、顎や肩、背中の痛み、息切れ、冷や汗、強い違和感。こうした症状が出た時に、私自身がまさにそうでしたが、「疲れているだけ」「少し休めば治る」「仕事が落ち着いてから病院に行けばいい」と考えてしまうかもしれません。しかし、心筋梗塞は待ってくれません。症状がいったん治まったとしても、体の中では危険な状態が進んでいます。仕事は大切です。繁忙期であればなおさらですし、休みにくくもあります。周りに迷惑をかけたくないという気持ちもあります。それでも、自身の命より優先すべき仕事はありません。
今回、私は幸いにも助かりました。しかし、あと少し判断が遅れていれば、どうなっていたか分かりません。だからこそ、同じような症状が出た方には、迷わず病院に行ってほしいと思います。夜間や休日で判断に迷う場合には、#7119に相談することもできます。明らかに危険だと感じる場合には、すぐに救急車を呼んでください。
そして、普段から健康診断の数値、血圧、血糖、コレステロール、喫煙、食生活、運動不足を軽く見ないことも大切です。動脈硬化は、ある日突然始まるものではなく、日々の積み重ねで静かに進んでいきます。
今回の私の経験が、皆さん自身やご家族の健康を見直すきっかけになれば幸いです。
「まだ大丈夫」と思っている時こそ、体からの小さなサインを見逃さないでください。
忙しい時ほど、無理をしすぎないでください。そして、少しでもおかしいと思ったら、仕事より先に、自分の命を守る行動を取ってください。
