最低賃金と労働時間

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T.S

 毎年秋になると、労働者の生活に直結する重要な制度が見直されます。それが「最低賃金」の改定です。
最低賃金とは、企業が労働者に支払わなければならない最低限の賃金を定めた制度です。
この最低賃金は、全国一律ではなく、地域ごとに異なる金額が設定されています。
改定の時期は例年10月頃に施行されます。2025年においては、東京都の最低賃金が1時間あたり1,226円に引き上げられる予定です。これは前年の1,113円から63円の増加であり、都内で働くすべての労働者に適用されます。
最低賃金は時給単価で公表されます。月給の方については、時給単価を算出する必要があります。
月給の方の時給単価の計算方法は以下の計算式で算出します。

【月給者の時給単価=月給額÷月平均所定労働時間】

上記の『月平均所定労働時間』とは1カ月間の働く時間の平均です。
この時間によって、最低賃金を超えるかどうかが変わってきます。こちらは以下のように計算します。

【月平均所定労働時間=(年間暦日数365日-年間休日)×1日の所定労働時間÷12ヶ月】

 ここで、月平均所定労働時間によって時給単価が異なる事例を紹介します。
事務のAさんという方がいたとして、この方の休日が、毎週土日がお休みで祝日もお休み、年末年始も数日休みとすると、年間休日はおよそ125日になります。(年間52週で土日休み、国民の祝日が16日、年末年始に5日休む場合、(52×2)+16+5=125日)
1日の所定労働時間が8時間勤務のとき、月平均所定労働時間は下記のようになります。
◎Aさんの月平均所定労働時間=
(365日-年間休日125日)×1日の所定労働時間8時間÷12ヶ月=160時間

 次に、飲食店でシフト勤務のBさんが土日祝日かかわらず週休2日シフト制で働いていたとします。
年末年始に1日お休みの場合、年間休日は105日となります。(年間52週で完全週休二日制、年末年始に1日休む場合。(52×2)+1=105日)
この方の1日の所定労働時間も8時間とするとBさんの月平均所定労働時間は下記のようになります。
◎Bさんの月平均所定労働時間=
(365日-年間休日105日)×1日の所定労働時間8時間÷12ヶ月=173.33時間

 AさんBさんどちらも月給20万円のとき、お二人の時給単価を計算すると以下のようになります。
Aさんの時給単価=月給20万円÷月平均所定労働時間160時間=1,250円

Bさんの時給単価=月給20万円÷月平均所定労働時間173.33時間=1,154円(端数切上)

 同じ給与額ですが、月平均所定労働時間の違いで時給単価が変わってきます。
東京都の会社で勤めているとき、Aさんは令和7年の最低賃金を超えていますが、Bさんは下回ることになります。
このように働く時間によって、時給単価が変わるため、最低賃金を確認するは月給額だけではなく労働時間も気にする必要があります。
最低賃金を割って働かせていた場合、企業には労働基準監督署による是正指導が行われます。改善が見られない場合には、企業名の公表や罰則が科される可能性があります。
罰則としては、50万円以下の罰金が規定されており、企業の社会的信用にも大きな影響を及ぼします。
故意ではなく、知らなかった・気づかなかったで働かせていた場合でも同様で、最高2年遡って差額を労働者に支払わなくてはならない場合もあります。

 大幅な上昇が続いており、経営者の方々にとっては大変な問題でもあるかと思います。ですが、最低賃金は働く人々の権利を守るための大切な制度です。
労働者と会社のイメージともに守るために、最低賃金はしっかり把握しておく必要があります。